か、かえらせてくれ!!!
つねにどこかへかえりたがっている、かわいそうなひとのにちじょう。
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吐き出されて空に溶けた紫煙が不条理な己の思考ならば良かったのに
「水鏡、待ってくれよ、」
声を出すことによって突き刺すような寒さが喉を刺激するが、声を出さずにはいられない。目の前を走っていたはずの彼はいつの間にか距離をあけている。
「遅いぞ風柳!」
凛としたボーイソプラノが風に乗って届いてきたが、彼は此方を振り返る様子は見せなかった。流れる景色に関心を向けることなく、僕たちは走り続けた。呼吸のリズムが乱れても、足に力が入らなくなろうとも。
どのくらい、そうやって走っただろうか。不意に水鏡との距離が縮まって、隣に並んだ。そこで漸く彼がスピードを落としたと知るのだ。長く伸びた薄水色の髪はしなやかに宙を舞い風と戯れているようで、彼そのもののようだと苦笑した。
「こんなスピードじゃあ、本番は捕まるぜ。」
秀麗な眉を寄せて彼は云う。まるで名のある職人に手がけられた造形作品のように整ったパーツを持っている彼に責められると、心苦しく思えて仕方が無い。僕は謝罪する代わりにスピードを徐々に落として立ち止まる。それまで満足に得られなかった酸素を求めて激しい呼吸をいくつか繰り返すが、冷え切った空気の中でそれを行うのは難しい。ふと視界の端に鮮やかな紅色が映り、身体を固くする。
「水鏡、まずい、もう、近い、」
先に行ってしまったと思った彼は案外近くで止まっていて、息継ぎを含めた僕の言葉に頷いた。いくら練習とはいえ、ここまで近付いては奴らに見つかり、怪しまれかねない。こんな些細なミスで自分達に注意を払われてしまうと今までの計画が水の泡だ。
「帰ろう。」
手を顎にあてて何やら考え込んでいたが、やがて校舎に向かって歩き出す水鏡。頭の回転が速い彼のことだ、大方この状況を利用して何とか外に出る方法は無いものかと計算していたのだろう。今回は長距離走の練習だと許可を貰ったが、此処まで来れる事自体滅多にないチャンスなのだ。
まるでそれそのものが塀であるかのように太く伸び絡まる薔薇の蔓には、猫が通れる隙間さえ何処にも開いていないと云われている。実際一度近くで見学した幼少時、手を入れることさえ叶わないほどの絡みようだったと記憶している。そんな塀が途絶えることなく、僕らの生活を囲っているのだ。
「久し振りに見たよ。」
「俺もさ。」
深呼吸を繰り返して落ち着いてきたところで改めて薔薇の塀を横目で睨む。水鏡は薔薇自体には興味が無いようで、僕を待つように立ち止まり細いゴムを口の端に銜えて髪を結い始める。薄く色づいた頬と唇の瑞々しい赤だけが、彼が人形ではないことを証明してくれるようだった。
「水鏡、」
「うん?」
「僕はもっと練習するよ。君と必ず此処を出たいんだ。」
「ああ。俺もお前と必ず出られるような計画を練るさ。」
一陣の風に乗った薔薇の匂いが、僕たちを哂うように包み込んだ。
いきなり何かって、オリジナルの話。肩慣らし…にもなってない。
あれ?水鏡って昔書いた時は銀色の髪だった気がしてきた・・・
続きませんよ!(そらそうだ
声を出すことによって突き刺すような寒さが喉を刺激するが、声を出さずにはいられない。目の前を走っていたはずの彼はいつの間にか距離をあけている。
「遅いぞ風柳!」
凛としたボーイソプラノが風に乗って届いてきたが、彼は此方を振り返る様子は見せなかった。流れる景色に関心を向けることなく、僕たちは走り続けた。呼吸のリズムが乱れても、足に力が入らなくなろうとも。
どのくらい、そうやって走っただろうか。不意に水鏡との距離が縮まって、隣に並んだ。そこで漸く彼がスピードを落としたと知るのだ。長く伸びた薄水色の髪はしなやかに宙を舞い風と戯れているようで、彼そのもののようだと苦笑した。
「こんなスピードじゃあ、本番は捕まるぜ。」
秀麗な眉を寄せて彼は云う。まるで名のある職人に手がけられた造形作品のように整ったパーツを持っている彼に責められると、心苦しく思えて仕方が無い。僕は謝罪する代わりにスピードを徐々に落として立ち止まる。それまで満足に得られなかった酸素を求めて激しい呼吸をいくつか繰り返すが、冷え切った空気の中でそれを行うのは難しい。ふと視界の端に鮮やかな紅色が映り、身体を固くする。
「水鏡、まずい、もう、近い、」
先に行ってしまったと思った彼は案外近くで止まっていて、息継ぎを含めた僕の言葉に頷いた。いくら練習とはいえ、ここまで近付いては奴らに見つかり、怪しまれかねない。こんな些細なミスで自分達に注意を払われてしまうと今までの計画が水の泡だ。
「帰ろう。」
手を顎にあてて何やら考え込んでいたが、やがて校舎に向かって歩き出す水鏡。頭の回転が速い彼のことだ、大方この状況を利用して何とか外に出る方法は無いものかと計算していたのだろう。今回は長距離走の練習だと許可を貰ったが、此処まで来れる事自体滅多にないチャンスなのだ。
まるでそれそのものが塀であるかのように太く伸び絡まる薔薇の蔓には、猫が通れる隙間さえ何処にも開いていないと云われている。実際一度近くで見学した幼少時、手を入れることさえ叶わないほどの絡みようだったと記憶している。そんな塀が途絶えることなく、僕らの生活を囲っているのだ。
「久し振りに見たよ。」
「俺もさ。」
深呼吸を繰り返して落ち着いてきたところで改めて薔薇の塀を横目で睨む。水鏡は薔薇自体には興味が無いようで、僕を待つように立ち止まり細いゴムを口の端に銜えて髪を結い始める。薄く色づいた頬と唇の瑞々しい赤だけが、彼が人形ではないことを証明してくれるようだった。
「水鏡、」
「うん?」
「僕はもっと練習するよ。君と必ず此処を出たいんだ。」
「ああ。俺もお前と必ず出られるような計画を練るさ。」
一陣の風に乗った薔薇の匂いが、僕たちを哂うように包み込んだ。
いきなり何かって、オリジナルの話。肩慣らし…にもなってない。
あれ?水鏡って昔書いた時は銀色の髪だった気がしてきた・・・
続きませんよ!(そらそうだ
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